アルコールが中性脂肪を
上げるメカニズム
アルコールを飲むと肝臓で
中性脂肪の合成が促進される
お酒を飲むと中性脂肪が増加するのは、肝臓の中にアルコールに反応して中性脂肪を作るメカニズムが備わっているからです(1)。
まず、アルコールが肝臓に入ると、中性脂肪の原料である脂肪酸を作る酵素(SREBP-1c)の働きが高まり、一方で脂肪酸の燃焼を促す酵素(AMPK)の働きが抑制されます。つまり中性脂肪の原料が肝臓に溜まっていくので、中性脂肪が次々と合成されます。
さらにアルコールの分解の過程で出てくるアセトアルデヒド(二日酔いの原因物質)は、中性脂肪の分解や脂肪酸の燃焼に預かるPPAR-αの働きを抑えるので、中性脂肪は分解されずに残ります。
このようにいくつもの酵素がアルコールの影響を受けて、肝臓中の中性脂肪を増やす方向に働くのです。肝臓で作られた中性脂肪の大半は、血液中に放出されます。
お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる方、少量でも二日酔いになる方はアセトアルデヒドの分解が遅い状態。PPAR-αの働きがより抑えられてしまう体質だと考えたほうがよいでしょう。
昔より飲めるようになった人は
中性脂肪が上がりやすい
昔は弱かったけど今は飲めるようになった人は、CYP2E1という酵素が肝臓の中で増えたおかげで飲めるようになったと考えられます。このCYP2E1はアルコールを分解する働きがあって、習慣的にお酒を飲むと増え、お酒を控えると減ります。
ところがCYP2E1は中性脂肪を分解するPPAR-α関連酵素を抑制する働きも持っており、肝臓中の中性脂肪を増やす方向に働きます(2)。
以前よりもお酒が飲めるようになった人は、元々飲める人よりも中性脂肪が上がりやすいと考えておいた方がよいでしょう。
食事と一緒にアルコールを飲むと
中性脂肪は遅れて上がる
食事と一緒にお酒を飲むと、飲まない時と比べて、中性脂肪は緩やかに遅れて上がります(3)。つまり翌日の検査に響いてしまう……。これは肝臓がアルコールの分解を優先してその他の栄養素の取り込みを後回しにするからです。
また、肝臓で優先的に分解されたアルコールは最終的には酢酸となって血液中に放出されます。酢酸には血液中の中性脂肪の分解を抑制する働きもあります(4)。食事と一緒にアルコールを摂取した場合、中性脂肪は食事だけやアルコールだけを摂取した時よりも緩やかに遅れて上がると覚えておいてください。
血管の酵素LPLが多い人は
中性脂肪が上がりにくい
血管壁の表面に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)。LPLは肝臓から出て血液中を流れる中性脂肪をつかまえて分解してくれます。同量のアルコールを摂取しても、LPLが多い人は中性脂肪が上がりにくく、少ない人は上がりやすいことが研究で示されています(5)。
同研究ではLPLの量とアルコールの摂取量との関係を調査していました。中性脂肪が高い患者さんと年齢を合わせた健康な人とを対象に調べたところ、患者さんはLPLの量が少ないかつアルコールを継続的に摂取している割合が多かったそうです。
骨格筋量が多い人はLPL量も高いので、アルコール摂取後の中性脂肪も上がりにくくなることが期待されます。
中性脂肪が気になる方は
お酒とつまみも気にして
お酒に強い人と弱い人がいるように、アルコールによる中性脂肪の上がりやすさにも個人差があることがわかりました。
中性脂肪が高いけどお酒をやめるのが難しい方は、お酒に含まれる糖質を気にすることから始めてはいかがでしょうか(図)。
例えば、糖質の多いビールやサワー類、梅酒より、焼酎やハイボールなどの蒸留酒を選ぶ。おつまみも低糖質のチーズや枝豆、豆腐、刺身などを選ぶ。やめるのではなくちょっと変えるだけで、楽しいお酒は続けられます。ただし飲みすぎは気を付けてください。
(図)アルコール飲料に含まれるエネルギー量と炭水化物量(炭水化物は、糖質+食物繊維です。炭水化物をほぼ糖質とみなしてご参考ください)