「中性脂肪」という言葉を血液検査の項目で見たことはありますか。ここでは中性脂肪のことや検査値が上がる理由、中性脂肪が高かった時に気をつける点などをわかりやすくご紹介します。
中性脂肪とは
中性脂肪ってなに?
体脂肪と同じ脂肪で、エネルギーの塊です
検査項目の中性脂肪は体脂肪と同じ脂肪を指します。その脂肪が血液中を流れています。
食べた物が消化吸収されて中性脂肪という形で体中に送られます。中性脂肪は水に溶けにくい物質(=脂質)であるため、水に溶けやすい物質と“団子”になって血液中を流れています。血液検査ではこの団子を捕まえて中に含まれる中性脂肪の量を測定しています。
コレステロールとの違いは?
コレステロールは細胞や性ホルモンの材料で0カロリーです
中性脂肪はエネルギーの塊で“燃えやすい”のに対し、コレステロールは細胞やホルモンの材料にはなりますが、エネルギーにはなりません。
コレステロールも水に溶けにくい物質(=脂質)のため、水に溶けやすい物質と“団子”になって血液中を流れています。血液検査ではこの団子を捕まえて中に含まれるコレステロールの量を測定しています。
コレステロールが増えすぎると血管内部に溜まって心筋梗塞を引き起こす原因になると言われていますが、中性脂肪はコレステロールのように血管内部には溜まらないと考えられています。
高い場合のリスク
中性脂肪が高くても、痛みも不調も感じないんだけど?
数値が高くても、大抵は痛みも不調も感じません
中性脂肪の数値は痛みや体調に影響が少ない指標です。肝機能検査値やコレステロールと同様に、数値が上がっても下がっても変化を感じにくいと思います。ただ、中性脂肪が1,000 mg/dLを超えた時は、急性膵炎という激痛を伴う疾患のリスクが高くなります。
中性脂肪が高いことは何がどう悪いの?
内臓脂肪がかなり溜まっているサインです
生活習慣の影響で検査値が高い場合は、血液中に中性脂肪が溢れている状態を表しています。
通常、中性脂肪は皮下脂肪として蓄えられます。皮下脂肪が一定程度いっぱいになると今度は小腸の周りに内臓脂肪として溜まります。
内臓脂肪は皮下脂肪と違って、中性脂肪の検査値を高める方向に働きます。たとえ、太っているように見えなくても、内臓脂肪をたくさん抱えていると中性脂肪の値が上がりやすくなります。
また、内臓脂肪が多いと糖尿病や心筋梗塞を発症する確率が高まります。
内臓脂肪は静かにあなたのお腹について、あなたに病気を引き寄せるのです。
中性脂肪が高いだけで病院に通うのは変じゃない?
全く通院の必要が無いものから、治療が必要なものまで、様々です
直近の食事やここ数ヶ月の生活習慣で“たまたま”高かっただけ、という方もいます。
しかし、何度測っても高い場合は血液中に“レムナント”がたくさん流れている可能性があります。
脂質を運ぶ団子(団子についてはページ上段の『中性脂肪ってなに?』をご参照ください)のうち、“レムナント”はそれ単体で心筋梗塞を起こすリスクを高めます。レムナントはLDLコレステロールの値にはほとんど反映されません。
「中性脂肪はずっと高いけど、LDLコレステロールは低いから大丈夫」という方は、一度で良いので本当に大丈夫かどうか医師にご相談されてはいかがでしょうか。
中性脂肪が高い状態を放っておくとどうなるの?
70歳以降に心筋梗塞がやってくるかもしれません
「中性脂肪が高い生活習慣」を続けることが心筋梗塞や脳梗塞を引き寄せます。
中性脂肪の値が高いメタボリックシンドロームを基盤にして、年齢を重ねるごとにLDLコレステロール、血圧、血糖などが順番に重なっていくと考えらえています。
毎年健康診断を受けている労働者を対象に、心筋梗塞と狭心症を発症した人たちと発症しなかった人たちの健診結果を10年前まで遡って分析したところ、発症者は非発症者と比べてBMI、血圧、空腹時血糖、脂質が軽度ながら有意に高く、その傾向が10年間持続していたことが分かりました(1)。
これらの検査値が関係する脂質異常症、高血圧症、糖尿病はどれも心筋梗塞のリスクです。
また、2018年度中に国内で起こった心筋梗塞などによる手術件数を人口統計と照らし合わせると、男性では75歳~84歳で発生率が最も高くなります(図)(2)(3)。
中性脂肪が高いだけのうちに変えられるところから始めてみませんか。
中性脂肪を下げるには?
中性脂肪を下げるにはどうしたらいいの?
ほんの少しだけ今の生活習慣を変えることが大事です
中性脂肪の数値を下げるためには、食べる物を少しだけ変えたり、活動量を少しだけ増やしたりすることが必要です。しかし、無理をする必要はありません。中性脂肪の値を上げるのが生活習慣なら、中性脂肪の値を下げるのも生活習慣です。続けられてこその習慣なので、続けられることの中でいろいろご自身に合うものを探してみてください。
中性脂肪が高い時の気をつけ方
中性脂肪が高くても何も言われなかったけど?
1回の測定で本当に異常かそうでないかを判断することは難しいためです
中性脂肪の数値はいろいろな影響を受けて変動します。
◇ 生まれ持った体質:遺伝子の変異によって、食後の中性脂肪が極端に高くなる人や、上がった値がなかなか下がりにくい人など、約100に1人の割合でいるようです。
◇ 持病や服用薬の影響:甲状腺機能低下症がある場合には中性脂肪が高くなることもあるようです。またステロイドを服用している方も上がりやすいと言われています。
◇ 食生活、運動習慣:皆さんよくご存知のことと思いますが、食べた物と消費エネルギーとの収支だけでなく、朝ごはんを食べる習慣がない、筋肉量が少ない、といった場合も高くなる傾向があります。
◇ 直近の食事の内容:消化に時間がかかる食事を摂ったり、一緒にお酒を飲んだりしていると採血までに十分に中性脂肪が下がらないことがあります。
初めて高かった方は、次回の測定では直近の食事に気をつけてください。それでも高かった場合は、食生活や運動習慣を見直すことをお勧めします。それでも高いままなら、一度医師にご相談ください。
どうなったら気をつければいいの?
150を1回超えたら要注意、何回も超えたら要相談です
1,000mg/dLを1回でも超えたら、できるだけ早く医師にご相談ください。急性膵炎を起こすリスクが高いためです。
中性脂肪だけでなく、HDLコレステロールやLDLコレステロールなど他の脂質が異常値を示した場合も一度医師にご相談ください。
自分自身で努力しても、基準値以内にならないようでしたら一度医師にご相談ください。
中性脂肪を下げると他にどんないいことがあるの?
中性脂肪を上げない生活習慣が手に入ります
人は健康維持のためだけに生きているわけではないと思いますが、健康の重要性は年を重ねるほど大事になってきます。時間と似ていますね。
中性脂肪の値が高いことで起こる病気にかかったとしても、早めに対応して適切な治療が行われれば、今までと変わりない普段の生活を送ることができます。
しかし、起きないに越したことはないと思いませんか。「医療保険に入っているから大丈夫」はお金の話であって、あなたの健康は別問題です。
中性脂肪が高い人の割合
中性脂肪が高い人はどれくらいいるの?
男性は10人に3人、女性は10人に1人くらいいるようです
40歳以上の成人男女を対象に行われる特定健診の結果から、脂質を下げる薬を飲んでいない人のうちで中性脂肪の数値が150md/dL以上の割合は男性で約28%、女性で約12%でした。年代ごとの分布は以下の図をご参照ください(4)。
また、人間ドックではさらに細かく層別されており、500mg/dL以上の人は男性で100人に1人、女性で1,000人に1人、1,000mg/dL以上になると男女ともに1,000人に1人いるかいないかくらい、とっても珍しいです。
30歳で中性脂肪が高いのは異常なの?
別の日に測っても高ければ、一度医師にご相談ください
検査の前日夜遅くまでお酒を飲んでいた、夕食が遅くなった、などの理由で最後の食事から検査までに十分な時間が取れなかった場合、中性脂肪の値が150mg/dLを超えることがあります。それまでの検査が一度も異常値が出たことがない方は、次回の検査では十分に気をつけてください。
それまでにも何度か異常値が出ている場合は、一度内科の医師にご相談されてはいかがでしょうか。
中性脂肪が低い人はどれくらいいるの?
男性は500人に1人、女性は80人に1人くらいいるようです
人間ドック学会のデータを見ると中性脂肪の値が30mg/dL未満の割合は女性の20歳代が多いようです。もし低い値が出たら、生活習慣などを振り返ってみてください。十分に栄養を摂れていない場合は、中性脂肪の値が高い方と同様に食事にご注意ください。思い当たる節が無い場合は、一度医師にご相談することをお勧めします。